骨を折ってわかったこと
                  
                                            小 笠 原 嘉 祐


 二年ぶりにデンマークに行ってきました。

私が滞在したのはポーゲンセという町ですが、ここはアンデルセンの生家のある、日本でいえば京都のようなオーデンセという古い都市の郊外にあります。

 この町に伝統的なデンマーク流生涯教育のための国民高等学校があるのですが、ここを拠点としてデンマークの医療・福祉の状況を今回も体験してきました。この学校の主宰者はデンマーク在住30年の千葉忠夫氏です。彼とは私の娘がお世話になったことをきっかけに知り合い、度々私たちのセミナーに来ていただいています。


 さて、デンマークは先進福祉国家といわれるだけに大変行き届いた福祉医療教育のシステムがあり、すべてが無料です。但し税金が大変高く、直接税は平均50%、そして消費税は26%です。しかしこの国では「高福祉・高負担」といわず「高福祉・高税」といいます。つまり税は日本人が考えるような負担ではないのです。デンマークは個人主義に根ざした民主主義国家であり、相互扶助がしっかり確立された社会だからこその事なのです。


 そしてノーマリゼーションの思想があります。これは障害者と健常者がともに生きる社会という−般論を語った枚念ではなく、デンマーク流にいえば「どんなに障害が重くても普通の生活にできるだけ近づけることがノーマルである」という一人一人の価債を大事にする具体的な思患なのです。

これが実残されているからこそ、この国では高齢者には介護の社会化が実現され、障害をもった人の地域生活が促進され、脱施設化が実現しているのです。一人一人が大事にされている社会が目の前に見えるのは、経済的に大丈夫なのだろうかというある種の毒を感じつつ、いつも驚きです。


 そして今回の滞在期間中に骨折をしてしまいました。学生さん達とバレーボールをしていての骨折でした。すぐに県立病院の整形外科に運ばれて入院をしました。二日間ですが思いもかけぬ貴重な医療体験になりました。

さすがにデンマークらしく外国人にもかかわらず医療費は無料でした。(但し24時間以内の救急医療に限られますが)ノーマリゼーション3原則である治療を受けるにあたっての「自己決定」、「生活の縦続牲」の為に長期入院はさせないこと、そして看護のなかでの「自己能力の開発」が印象的でした。


出来ることは自分でやることを原則にして、いわゆるかゆいところにかかわる手厚さとは違うかかわり方でした。2日の入院体験後は車椅子を借り、その後の日程を変更せずにこなしました。一人一人が大事にされることといわゆる「手厚さ」とは別のことだというノーマリゼーションの基本を実感として理辞でさた貴重な体験でした。