てんかんと社会生活

 

 てんかんは、その病名によって、いろいろな社会的不利益を得ることが多い疾患です。てんかんのみならず、この社会では慢性の神経あるいは精神の疾患が結果的にいろいろな面での差別があるのは極めて残念なことです。


 てんかんは、様々の原因によって起こす慢性の脳の機能障害です。神経細胞の一時的な興奮によって発作が起こり、治療をしなければ反復します。症状は一定ではありませんが、特に脳波の検査で確実に診断ができる疾患といえます。


要するに「発作」を特徴とした神経疾患であって、その症状によって一時的に何ら心の形で意識がくもる状態であるという以上の何ものでもありません。その症状がない時にはまったく平常の状態です。ただ突然そのような意識のくもりが起きるために、社会生活をする上で障害があります。


したがって、発作をコントロールする必要があります。まず、てんかんで必要な対処は適切な医療です。


 てんかんの医療は近年急速に進歩しています。その症状である発作はかなりコントロールすることができるようになってきました。その理由は二つあります。診断の進歩と治療の進歩です。まだ根絶というわけにはいきませんが、少なくとも大部分のてんかんについては、治療の進歩によって発作のコントロールが可能になっています。

それをささえているのは薬の進歩と考えられます。

確かに薬は副作用を常に注意しなければなりませんが、てんかんの治療薬の場合には、血中濃度の検査法が確立しています。これによって有効な治療のための薬剤の血中濃度の把握と副作用防止が客観的に可能となっています。


 治療の進歩とともに、てんかんの診断の進歩が、発作のコントロールに大きな貢献をしています。


的確な診断によって、発作がコントロールさらに完治する指針になるということです。てんかんの診断には脳波の検査が欠かせません。その結果と臨床症状を組み合わせ、的確な判断によっていくつかのてんかん発作については完治することさえわかっています。

もちろん、一方にはバラ色の状況だけではなく「難治」のてんかんがあることも事実です。しかし、てんかんをもつ人々の全体をながめるならば、七ないし八割の人々は発作から自由になる状況にあることも明らかです。診断と治療の進歩はこれらのことを確実にしているということであり、もはやてんかんは治ることはないという過去の悲観主義は捨てていただきたいと思います。


 さて、てんかんに対してはまだ社会の中での伝統的な偏見があるのは事実です。これは発作の有様に対する素朴な感情としていみきらわれたこともあるのだと思います。また、治療に対する過去の悲観主義も影響しているように思われます。


 前に述べましたように、てんかんは発作病であって、それ以上でも以下でもないのであり発作がコントロールされたなら、もはや社会的にも何ら制限を加えられる必要のない病気なのです。


 ところが、てんかんという病名が、一度つけられることで社会的・法律的制限が実際には沢山あるのも事実です。具体的には調理師になろうとすると制限が加えられます。最近障害理解の中で少しずつ緩和の動きがあるのは喜ばしいことです。


免許に関しては、運転免許に対する制限は特筆すべきことです。現在の法律ではてんかんの病名故に、それがコントロールされているかいないかはおよそ無関係に免許は取得できないことになっています。日本をはじめいくつかの国を除いて、このような制限を課している国は、少なくとも先進国の中では少ないといわれています。もちろん発作が現に起きている人が運転をするのは危険であることは当然ですが、コントロールされている人を含めて免許取得が問題外とされているのは不当なことだろうと思います。


 残念ではありますが、免許取得については制限が法律的事実としてあるのだということを申しあげておきたいと思います。

といって社会生活の中で卑屈になったり、自ら制限を加えないようにして下さい。発作がコントロールされさえすれば、生活上では何の制限の必要もありません。


 よく学校では、てんかんの診断故に水泳が禁止されたり、いろいろな制限をうけていると聞きます。きちんと治療をうけて発作がコントロールされているなら、堂々とすべての場面で制限をうけることなく学校生活を送って下さい。そして、それが可能であることを学枚の先生やPTAの皆さんはもちろん同級生の人々にも理解してもらうようにして下さい


 学校だけではありません。社会生活の中で、てんかんの診断故の差別が許されてはいけません。

あらゆる分野で制限されることのない社会生活を送っていただきたいと思います。


 つけ加えますと、全国の組織として、「日本てんかん協会」という組織が、てんかんをもった人々の権利擁護について、当事者の意志を代表して着実に活動しています。当事者の方々で、一人で悩んでいる人がおられたら是非この協会と接触されることをおすすめいたします。

 尚、ご相談はピネル記念病院外来まで。

(掾j096-365-1133

   平日午前9:00〜12:00  午後1:00〜5:00

   日・祝祭日は休診
                             (小笠原 嘉祐)